第二からまつそう
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
獣の奏者 外伝 刹那 (上橋菜穂子) 「今日どんな本をよみましたか?(197472)」
獣の奏者 外伝 刹那  上橋菜穂子 著 浅野隆広 装画 坂川栄治+田中久子(坂川事務所) 装丁 (2010年9月3日第一刷発行 講談社)


獣の奏者(外伝)

獣の奏者(外伝)

価格:1,575円(税込、送料別)





王国の行く末を左右しかねない、政治的運命を背負っていたエリンは、苛酷な日々を、ひとりの女性として、また、ひとりの母親として、いかに生きていたのか。
時の過ぎ行く速さ、人生の儚さ知る大人たちの恋情、そして、一日一日を惜しむように暮らしていた彼女らの日々の体温が伝わってくる物語集。(カバーそでより)






「刹那」

出産間近になっても陣痛が弱い。
エリンの生死は国政に関わる大事。
真王からは自分のお産を任せた産ノ医術師の愛弟子が、王宮からは伝報使が派遣されてくる。
出産後即エリンと子の生死を伝えるために。

ごめんね。
生まれてくる前から、こんな目にあわせて…

エリンが苦しむ産室を隔てる壁を見詰めるイアルはエリンが家を訪ねてきた時を回想する。

あのとき家にあげずに…
どこか下町で夕食をとりながら話し、それだけで帰していたら、何か違っていたのだろうか…




〈降臨の野〉での奇跡の後、堅き楯の誓いを解き平民となり、指物師である幼馴染・ヤントクを頼り仕事を始めたイアル。
そんなイアルの元にエリンが訪ねてきた。
ラザル王獣保護場で突然発生した王獣達の病の原因究明と治療を命じらラザルに滞在中のエリン。
その後も食材を持ってはイアルの家へ〈餌やり〉に訪ねてくるように…

だが、突然来なくなるエリン。

何故急に来なくなっただろう?
何故来てくれていたのだろう?

エリンとのとりとめのない会話の端々までも辿っている自分に気付いたイアルは引き返せない所まで来てしまった事を悟る。
再び会いに来てくれたとしてもカザルムに帰さなければ…いまならまだ…

しかし堅き楯の同僚だったカイルからエリンが訪ねてきた時の様子を聞いたイアルはラザルへと向かい警備の薄い森から忍びエリンを探す。
王獣舎から漏れる光。うずくまり小刻みに身体を震わせ泣くエリン。
これまでに見た事が無い姿に訪ねて来ては笑顔で今日あったあれこれを話していった明るいエリンの笑顔が浮かび胸が苦しくなるイアル。
一人で抱えるには重すぎるエリンの哀しみや不安。会えば明るい顔しか見せられない…そういう人なのだ。
愛おしさを感じるイアルだが…

数日後、エリンは再びイアルの元を訪れる。
エリンの様子からカザルムに帰るのか尋ねるイアル。
エリンは特滋水の濃度と調合の割合が判明したが二頭の王獣を死なせてしまったと話す。
あきらめてしまったかのような遠い声。
イアルはカイルの宿直明けを待ってまでしてここを訪れてくれた甲斐があったのか尋ねる。
居を突かれ無防備な顔を見せ、ギュッと目を閉じ俯き…

ここでご飯を食べていると…見ているものにちゃんと色があって…
ラザルにいると全てが薄い膜を隔てているようで…

外からの笛の音が大きくなり子ども達の歓声が響き…

明後日は龕灯祭り。龕灯作りは指物師の腕の見せ所。イアルも手伝ったと聞き驚くエリン。
エリンを祭りに誘うイアル。そして…


エリンの出産を待つイアルの回想の形で語られるイアルとエリンとの馴れ初め。
王都での二人の暮らし、出産を控えカザルムへ…





「秘め事」

タムユアン学舎で年齢も身分も学科も異なってはいたが取る者が少ない古詩の講義で意気投合し共に時を過ごしたエサル、ジョウン、ユアン。

下級貴族の二人姉妹の長女として生まれたエサルは同じ下級貴族の二男を婿に取り家を継がねばならない運命にあった。
しかし貴族の妻として暮らす運命を望まなかったエサルは総領娘の座を妹に譲り、主な収入源である薬草マキオリの栽培に力を尽くしたいと父に願い出る。
そのためにリオランを退学しタムユアン学舎で生き物について学ぶため編入ノ試しを受けたいと…
男よりもマキオリ…念願叶い薬草学科に進むエサル。
貴族と高級職能階層の子息が学ぶタムユアンではほとんどの者が夫々の格にあった家同士で縁組が組まれており、ジョウンもユアンも許嫁がいたため、エサルとは将来連れ添う可能性はなく気楽な間柄ではあったが…

真王ハルミヤ陛下の息女リノミヤの誕生祝宴に行こうとエサルとジョウンを誘うユアン。
上級貴族専門の医術師であるユアンの父がかつて命を救った貴族から招待状を譲り受けたのだと…
願っても得られない機会に是非行きたいと答えるジョウンだがエサルはユアンが許嫁と一緒にいる姿を見たくないと思いそうした席は苦手だと断ってしまう。
既に父に返事をしてしまったとユアン。許嫁も風邪のため来られないと…
後悔するエサルだが、尻込みするエサルを引っ張りだそうとするジョウンが人生何でも経験だと熱弁をふるいだす。
仕方がない風を装い招待を受けると答えるエサル。

宴当日。ユアンの家の馬車に揺られ向かう三人。
そこでエサルは初めて王獣を目にする。そして…




「初めての……」

二歳の誕生日を迎えたジェシは未だに乳離れ出来ないでいた。
這い這いも歩きだすのも言葉を話しだしたのも同じ頃に生まれたトムラ師の三番目の子どもヤムキちゃんに比べ早かったが、ヤムキちゃんはおっとり落ちついてジェシよりずっと心が成長している様な気がする…
しかしジェシはこれから色々な事を諦めていかなければならない。
乳離れも我儘を通せば通ると思わせるわけにはいかないと考えるエリンだが…



-------------------------------------------------------------------------



発刊直後はまだ近所の図書館の蔵書検索にも新着図書にも引っ掛からなかったため購入(or 近隣の図書館からの貸し出し)希望を出しました。
受付の人がニヤニヤしておられるなあと思ったら…提出した翌週には貸出可のメールが!わ~い!!
これまでの獣の奏者のシリーズも揃っていたので希望を出さずとも購入予定だったようです。
思ったよりも早く借りる事が出来良かった!



「刹那」はエリンとイアルの馴れ初めとエリン出産をイアルの語りで…
「秘め事」はエサルが自身の恋と友情、王獣と関わるきっかけとなったあれこれを…
「初めての……」は子育てに奮闘するエリンとジェシの乳離れを…


エリンが背負った運命は重過ぎるほど重く過酷。
イアルが背負った影も過去の柵も消え去るわけではない。
二人の持つ闇は底知れない。

しかし、生まれてきて良かったと思うエリンは諦めず、イアルにも諦めないでと迫る。
自分が家族にとっては死んだものとされていても。
生まれてくる子に生まれる前から重いものを背負わせねばならなかったとしても。

生き物は生まれる場所を選べない。
生まれる力を持たないものは生まれる前に流れてしまう事もあり、時にはおなかの子に母が連れ去られしまう事も…

それでも不安や苦痛を見せまいとし人としての営みを求めるエリン。
大概の女は無事に生むとヤントクの女房も…

母は強いのです。
更に逆境にあったエリンのお母さん、エリンが思う様に本当に強い人だったと思う。


探求・完結編を読んだ時、王都に隠れ家を残していた様子から二人は新婚(同棲)時代も常に追われ逃げるように隠れ住んでいたのだろうと思っていました。
確かに刹那でも追っ手や旧知の者に知られる不安があったりイアルが夢にうなされる場面や堪え切れず物に当たってしまう様子などもありましたが、互いへの想いに戸惑ったり子が生まれる事に自然と喜びが湧きあがってくる場面などが目に浮かぶように描かれているためか探求・解決編を読んだ時の様な言い知れない不安感はありませんでした。

エリン粘り強く大胆です。
エリンの立場からすれば一旦決めたら他の全てを置いて押しかけるしかなかったとは思いますが…

エリンは妊娠出産も山あり谷あり。
切迫流産でしょうか?
イアルは男ばかりに囲まれていたから知らなかったと思っていた様ですが街に普通に住んでいても知らない旦那さんも多いと思う。

逆子そして胎盤剥離?
私も逆子だったため帝王切開しましたがエリンの世界では無いのかな?
今でも胎盤剥離は怖い。義姉と今は成人した甥は出産の時かなり危険だった様です。
最後にイアルに励まされたエリンのいきみでジェシがクルリと回った様です。
無事に産まれて良かったですよ。

二人のあれこれが、匂いや体温とかリアルなのですが、何と言うか上品なんですよ。
〈奈落〉の描き方もイアルがカイルを訪ねるところもカイルが何をしていたのか想像はついてもね。(カイルがまた良いんですよ。ちょっとしか出てこないけど)

それは「秘め事」の中のエサルとユアンでも感じました。

その辺り、誰が読んでも良いが児童文学ではなく人生を半ば過ぎた人に向けた作品だと後書きに書かれている通りだと思いました。
これから恋をして結ばれて子を為すだろう年齢の人達にも読んで欲しいけれど、そうした時期を過ぎた者だからこそな所も多いのです。
なので若い人達はこれから何度もその年に合った読み方が出来、幸せだと思います。


3つの内どれを何度も読み返していたかと言えば「秘め事」です。
今までは既にエリン達の師であり親代わりでもあるエサルやジョウンしか知らなかったので。
成程なタイトルにはドキドキしたり切なくなったり。(守り人のトロガイを思い出したり…)
若いエサルはエリンと生きてきた場所、伴侶や子を得るかどうかの選択は異なっても自分の立場に抗い頑固で純粋でよく似ています。
エサルだからこそ、そしてエサルを友としてこの道へと押しだしたジョウンだったからこそエリンを受け入れ導いてくれたのでしょうね。

読んでいて学生の頃が懐かしく思い出されました。
エサルの様に優秀でも努力家でもなく貴族の役割も隠さねばならぬ秘め事もなかったですが、それでも好きな事に無我夢中に打ち込み仲間とあれこれ言い交わしたかけがえのない時期が私にもあったのです。良い師にも恵まれましたし…
そう思うと秘め事ではあっても学生さんにも読んでもらいたいかもしれません。


最後に、「初めての……」
私も上の子の乳離れは2歳過ぎ、下の子に至っては3歳近くまでかかったのでジェシの将来を思いきつく言いつつ止められない気持ちは分かります。あれはイアルの指摘通りやめられなかったに違いない。
回りも気になるんだよね。
元気過ぎるジェシに大変だけど乳を飲ませ幸せな時間を過ごすエリンはとても人間らしい。普通の悩めるお母さん。
ジェシが生まれて良かった。エリンのためにもそう思う。
この後を思うと悲しくなりますがそれでも幸せを確かに感じる時があって良かったと思いました。





もちろん一気読み!何度も読み返してしまいました。
秋の読書にお勧めします!

関連記事
スポンサーサイト
[2010/10/13 16:43] | | トラックバック(0) | コメント(2) |
<<「今期終了アニメ(9月終了作品)の評価をしてみないかい?10」(黒執事2、オオカミさんと七人の仲間たち、会長はメイド様!) 「アニメあれこれ(85598)」 | ホーム | GAINAX NETのトップページギャラリー 「アニメあれこれ(85598)」>>
コメント
こんばんは、「ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人」の管理人のピッコロでございます。いつもお世話になっております。記事とは関係のないコメントで大変失礼いたします。


まず最初に、お忙しい中当ブログのアニメ評価企画に参加して頂きありがとうございました。アニメ評価企画9の最終結果は、現在当ブログにて掲載中ですのでよろしければご覧になって下さいませ。

評価企画9の最終集計結果↓
http://blog.livedoor.jp/koubow20053/archives/51622440.html

さて、今回も「今期終了アニメ(9月終了アニメ)を評価してみないかい?10」と題しまして、評価企画を立ち上げましたので、参加のお誘いに参りました。また、この企画に賛同して頂けるのであれば、参加して頂けると嬉しいです。

なお、投票方法等についての詳しい事は以下の記事に書いておりますのでご覧ください↓

http://blog.livedoor.jp/koubow20053/archives/51622970.html


今後も色々とお世話になると思いますが、どうか末永いお付き合いのほどよろしくお願いいたします。宣伝大変失礼いたしました。
[2010/10/17 01:52] URL | ピッコロ #79D/WHSg [ 編集 ]
ピッコロさん
いらっしゃいませ!
こちらこそいつもお世話になりましてありがとうございます。

お誘いくださってありがとうございます。
今期はあまり感想は書いておりませんが出来る範囲で参加させていただきます。
[2010/10/19 10:15] URL | yamahusa #79D/WHSg [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://karamatusou.blog.fc2.com/tb.php/1562-36f1cdb7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
プロフィール

やまふさ

Author:やまふさ
第二からまつそうのやまふさと申します。
こちらはからまつそう(ココログ)
のミラーサイトです。

元はからまつそう(楽天ブログ)
で読書・マンガ・アニメ感想を中心に書いておりました。
諸事情のためからまつそう(ココログ)に移動しましたが他所様とのTBのやり取りが困難なためこちらにミラーサイトを設けました。
ココログかこちらかどちらか一本にするかどうか迷いどちらも残している状態です。
またからまつそう(楽天ブログ)も読んでくださる方がいらっしゃるため縮小版+その他記事で継続中です。


過去記事はからまつそう(楽天ブログ)
をご覧ください。

どうぞよろしくお願いします。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

カウンター

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。